2-1,豊平区豊平『鷹の湯』
このブログの始まりは札幌の銭湯スタンプラリーだった。
札幌市内の銭湯を巡り、私はある2つの真理にたどり着く。
『いい銭湯とは近くにある銭湯』
『〆切のあるスタンプラリーは性格的に合わない』
以上のことから、2年前にラリーを達成して以来、行きたい場所に思いついたまま訪れる今のスタイルに落ち着いた。
そんなふうに自由気ままなおふろライフを楽しんでいたが、気がつくとこの2年で多くの温浴施設が腐海に飲み込まれてしまった。たった2年だというのに、だ。
ブログに書けたさつよく加入の銭湯だけでも
の4件。
さつよく未加入でもブログに記載している分でいえば
の2件。
ほかにも、スパサフロ、富美の湯、黒田湯、澄川温泉など数え上げればきりがない。
まいった。
愛していることを伝えなければ、愛していると伝わらない。そして、愛していることも愛されていることも知らぬまま永遠の別れがすでに訪れていたと知ることが私の人生にはあまりにも多すぎる。
そう思ったらいても立ってもいられなくなってきた。
コロナ禍・後継者不足・施設の老朽化……
どうにもならないことはどうすることもできない。それはわかっている。それでもなお。それでもなお、応援することをやめたくない。
ただの二スタである私にできることは何もない。だからこそ、ふたたび札幌市内のあちこちで裸になっていこうと思う。
これができることのない人間の数少ないできることかもしれないから。
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@今回のスタンプラリーの個人的ルール@
■達成できなくてもOK
→〆切に追われると嫌になるので、ゆるく。
■チャリで行く
→だって、おなかの周りによくわからないふわふわしたものがついてきたもの。
→まあ、学のない私にはそれが何かはわからないが。
■行く場所はルーレットで決める。
→せっかく作ったからね
■行ったら1週間以内にアップ
→メモを取るつもりなし
→ブログが書けてから次の銭湯に行く
■黙浴
→コロナ禍だものね。
→まあ、しゃべる相手なんてもともといないから問題ない。
→ん?
→さみしいね?って?
→うるせえ
■以上
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で、2回目の銭湯スタンプラリーの最初に訪れたのは『鷹の湯』だ。
前回のスタンプラリーの始まりもここ、鷹の湯だった。だって、近いんだもん。
それにしても、最近の鷹の湯は若い常連さんが増えてきている。前回のスタンプラリー時は老紳士ばかりの銭湯だったはずなのに。
サウナブームの波がここまで来ているのか。それともわかりにくい鷹の湯の魅力が地域に伝わりつつあるのか。
いずれにせよ、私にとってもっともいい銭湯が鷹の湯だ。いつまでも豊平の地にありつづけてほしい。じゃなきゃ困る。
だが、このところ、鷹の湯ではボイラーの故障が続いている。気がかりだ。なにせ温浴施設の設備修復には巨額の費用がかかるそうだ。1度失われた銭湯がよみがえることはほとんどない。
どうか鷹の湯がこれからも地域にあり続けていることを願うばかりだ。
もしくはどこかの金融機関がピンチの際にはもろ手を挙げて金を貸してくれるくらい業界を盛り上げておけば、万が一を防げるかもしれない。
うむ。
みんな、鷹の湯に行こう!
みんな、地元の銭湯に行こう!
……
え?いきなり近場で済ますなですって?
スタンプラリーのルールはどうしたって?
ルーレット?
ああ、そのことね。
書き忘れてました。
■ルールに縛られるよりも銭湯を楽しむことが優先
→ルール破っても
→まーままーまーまー
→マナーは守るぜ!
→まーままーまーまー
次回:西区八軒『琴似温泉』
せん湯とごはんvol.10)豊平区豊平『鷹の湯』と豊平区豊平『蛸屋本店さっぽろ店』
家が火事でなくなった。
これが銭湯巡り(とブログ)を始めるきっかけになったのだが、「おかげさまで人生が豊かになりました!」と思えるほどポップでキッチュな出来事ではない。
あれからの私はいつも暗い影を背負い、笑顔を忘れ、信じられるものは自分、そして、金だけになった。
と、ハードボイルドを気取りたいところだが、実際はちゃらんぽらんで、ポップに、キッチュに生きている中年男性だ。付け加えるなら、キュート&ソーセクシーでもある。
そのはずだった。
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望外の平日休み。
雪も完全に溶け、自転車は春仕様になった。春の陽気に誘われて、なんだかちょっと遠くまでお出かけしたい気分。
そんなときはさかえ湯がいい。
だが、そこには地獄のような光景が広がっていた。
場外市場の火災。
さかえ湯には入れるのだろうか。
さきほどの写真を撮った時点では、まだそちらを心配していた。自分の想像力のなさに飽き飽きする。
さかえ湯から目と鼻の先。
写真を撮った後、指が震え始めた。
火が吹きあがる。
呼吸が速くなる。
手足がしびれる。
脂の混じった煙の臭い。悲鳴。サイレン。
頭が真っ白になる。
乗り越えたふりをしていた化けの皮があっさりとはがれる。
こわいやだこわい
— おふろニスタ (@ofuronista) 2021年3月30日
これが中年男性のつぶやきだというのだから困ったものだ。
しかし、内面を言葉にすることで自分を客観的に見つめることができた。自分がどんなに混乱しているのかをもう1人の自分が見ている。すると少しずつ落ち着いてくる。
今、俺はここにいるべきではない。
過呼吸をおさめるのに時間がかかったが、それだけは理解できた。
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自転車はいい。
足を回してさえいれば前に進む。前進さえしていれば、いつかはどこかにつく。
私のどこかとはここだった。
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いつも通りの熱い湯。キンキンの水風呂。替えたばかりのいいにおいのシャンプー。
日常が帰ってくる。
地に足がつく。
サウナがいつもより熱くなっている。最近、鷹の湯で熱湯と水風呂の往復ばかりしていた自分に気づく。
ああ、これで俺は大丈夫だ。
安心したら……
…………
はらが……
へってきた……
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鷹の湯から歩いて3分。
36号線沿い、コロナ禍の中で生まれた新店だ。
風呂上がりのビール。
しかも、つまみはたこ焼き。
さらにせんべろセットは、プレミアムモルツ(を含めたアルコールいずれか)3杯とたこ焼き6個(を含めたおつまみのいずれか1品)がついて
1000円ッ!!
これで1000円ッ!!
うぎゃあああああ
はふはふはふはふはふ
とろとろとろ
あちあち
はふはふはふはふ
ぐびーーーー
くひーーーー
はほはほあちあち
ぐびーーーー
くはあああああああああ
くはあああああああああ
くはあああああああああ
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複雑な1日だった。
感情の乱高下、過去との対峙、自己との対話。
自分のことばかりで被害にあった方たちには本当に申し訳ないと思う。
それでも私には私なりの痛みがあり、向き合い方があり、なぐさめ方がある。そうやって1日が過ぎ、否が応でも次の1日が来る。
誰もが幸せになれることはたぶんない。
でも、誰もが幸せになってもいい。
それは熱い風呂に溶けていく苦しみだったり、風呂上がりのビールだったり、舌がやけどするほどのたこ焼きだったり。
気がついたとき、「幸せだったのかもな」と感じられたら、それで十分だ。
町の銭湯はきっとその手助けをしてくれる。
だから、私は鷹の湯に行く。
だから、あなたにも地域の銭湯に行ってほしいと思う。
次回:札幌銭湯スタンプラリー再開編 2-1 未定
銭湯四方山話 その壱)湯屋に咲く華
刺青、タトゥーお断り。
これがプール・温泉・スーパー銭湯のデフォルトになったのはいつなのだろう。私が物心ついたときにはこれが『あたりまえ』になっていた気がする。
私は小さいころ家に風呂がなかったゆえ、『湯屋の華』を背負った裸の男性を見慣れていた。
だからなのか、今も「どうしてお断りなのか」を考えると「うーん」と首をひねってしまうような倫理観の持ち主となっている。
2021現在も札幌の銭湯の多くには『湯屋の華』が咲いている。(さかえ湯のようにお断りの銭湯もあるが)
そんな『湯屋の華』にまつわる四方山話。
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基本、私は銭湯ではしゃべらない。
するとすれば、番台(受付)の方とちょっと挨拶する程度。おおむね頭の中だけおしゃべりな、寡黙を気取った独身貴族(バツイチ)として過ごす。
だから、自分から人に話しかけることはほぼないし、そんな陰気な男性に話しかけてくる紳士もほぼいない。
けれど、ときどき思わず話しかけてしまうことがある。そういう日だって、たまにはある。これが私のアナザースカイ。
@@@@@@
蒸し暑い、狭いサウナの中で湯屋の華背負った男性2人が話していた。
A「重機まわすっつっても、オペの手配から何から自分でやらねえでこっちにばっかりふってくるんだよ」
B「見つかんなかったら自分でやんのかい」
A「貧乏暇なしだよ」
B「したっけ、風呂にでも入って息抜きしなきゃやってらんないよなぁ」
「「ガハハハッ、なあー!」」
どんな業界にも気苦労がつきものなんだろうなあ、と聞くとはなしに聞いていた。
A「ここ、休みだったらどこ行ってんの?」
B「あれ、ほら、〇〇通りまっすぐ行ってよ、スーパー曲がったところにある△△ってところよく行く」
あー、俺もよく行く!!
A「わかんねえなぁ」
B「ほれ、●●通り右に曲がってからまーっ直ぐ行ってさ」
A「あーー、近くにJRがある!」
私「いや、それは◇◇ですね」
「「うおっ!?」」
同時に驚く湯屋の華々。私も思わず話しかけた自分に驚く。
A「兄ちゃん、△△よく行くの?」
気を取り直して、気さくに話を振ってくれるおじさん。本当はやさしいおじさん!
私「そうなんです。あそこいいですよね」
B「お兄さん、くわしいのかい?△△のほかはどこ行く?」
私「■■とか行きます。ここから近いですけど、そっちも好きです」
B「あー、あそこなぁ」
A「俺、■■はあんまし行かねえわ。だって、■■って××組の親分来るしょ」
へえ、そんな情報もまわっているんだ。
私「あの人って親分さんだったんですね」
A「そう!ずらーって並んでよー」
B「やくざと一緒に風呂入ってたら落ち着かねえよ」
「「だよなあ!がっはっはっは」」
私「……ッ!?」
@@@@@@
刺青、タトゥーお断り。
なかなか難しい問題だ。
だが、ただただ難しい課題を「難しいね」とそのまま抱え込むことができるのも『公衆浴場=銭湯』の文化の懐の広さ・深さだ。個人的には奥の湯の「3人までOK」というのが発想の勝利だと思う。
だめっていうのもいい。
だめじゃないっていうのもいい。
正直に言うと、日ごろルールを破っていようが、銭湯の中でマナーさえ守ってくれればどうでもいい。
それが私のセブンルール。
lesson.2)白石区東札幌 共栄湯
白石区は難しい土地だ。
何がどう難しいかを説明するのは無粋というものだが、多くの札幌市民(とりわけ白石区民)は「うむ」と頷いてくれるはずだ。
だからなのか、白石区の銭湯は総じてホスピタリティが高い。利用客のことをよく考えている。
たとえば、白石区の銭湯(美春湯 、大豊湯、共栄湯、鷹の湯、東豊湯 ※鷹の湯・東豊湯は豊平区)が中心となって実施された数々の変わり湯のように。
その中で、共栄湯の方向性はおもしろい。
ピンクリボンの湯、オージュアなどの高級シャンプーが100円で借りられるレンタルシャンプー、日曜日はシャンプートリートメントボディークリームが無料で使えるレディースデイの実施など、数え上げればきりがない。
個人的には、レディースデイに使用するメーカーの変更タイミングが秀逸だった。大人女子を代表する中年男性として実に感服した。
そんな女性に優しい共栄湯の男湯を、今回は女子目線で紹介したい。
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共栄湯を利用する場合、ぜひおすすめしたいのがレンタルシャンプーだ。
私たち女子にはおなじみのDIORUM(ディオーラム)| Aujua(オージュア)をはじめとする高級シャンプーとトリートメントのセットが100円で借りられる。
だが、借りている人はまれだ。男湯はまっこと女子力が低い。
ロッカーのカギのバンドはねじねじ式。濡れても気にならないタイプ。扇風機、ドライヤー、体重計も最新だ。にもかかわらず、オールドスタイルの体重計も鎮座しているところが公衆浴場である。
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浴場に入ったら、主浴横のベストポジションが空いているかどうかを確認する。シャワーが温まるまでに主浴からばっしゃんばっしゃん熱いお湯を汲んで使うことができるからだ。
全身をざっくり洗った後は、まず真ん中の湯船の「熱湯(ねっとう)」へと進もう。
湯温は43℃の表記になっている。が、実に怪しい。
ここ最近の共栄湯の真ん中は『ドタマイカレトンドスカッ!!』と叫びたくなる温度が続いている。その事実を知らないお客さんがちょこっと入って出ていく様はとてもかわいらしい。
なんとか我慢して入り、自分に続く戦士の育成を目指してほしい。自分よりあとに入った紳士が「あちち」と言って足だけ入れて浴槽から出ていく様は見ものだ。それを横目に内心ほくそえんでいると自分の性格の悪さを自覚することができておすすめだ。
そこまで無理をしたくないならば、手前の主浴から始めるといい。ここは安心安全の適温設定。主浴の端は半身浴が楽しめる設計になっていて、こちらもまたいい。
そして、水風呂。
水風呂はけっしてサウナとだけセットというわけではない。共栄湯では、最初のおふろから温冷交代浴を始めてしまってかまわない。
なにせこれは助走だ。
共栄湯の真骨頂は一番奥の『超ぬる薬湯』。
それを思う存分味わいきるには、温冷交代浴を十全に繰り返しておく必要があるのだ。
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共栄湯の水風呂はおそらく地下水かけ流し。なのではないか。と思う。日によって温度が違う。気がする。きっと。
なんとなくだが、寒い日の水は冷たい。とても。すごく。ちめたい。
ぶはあっと水風呂に入ったら、『超ぬる薬湯』の前の蛇口から水を飲むといい。これもおそらく地下水かけ流しだ。たぶん。ちょっと出してから飲むと、水がちんちんに冷えていく。うまい。
そのあと、自席でふわふわしたあと、もう1度、熱湯→水風呂を繰り返す。このとき、水風呂の代わりにサウナ横にある『水シャワー』に置き換えても乙だ。
いいですか?まだですよ?ここで少し休憩をはさんでからです。
さあ行きましょう。
『超ぬる薬湯』です。
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『超ぬる薬湯』はおそらく37℃~38℃くらい。体温とほぼ変わらないので体の負担がほとんどない。何度か繰り返した温冷交代浴によって緩んだ心身は、ついに最高潮へと達する。
しかも、その薬湯は
『マンゴーの湯』
『アサイーの湯』
『パインアメの湯』
『ピンクリボンの湯』
『岩下の新生姜の香り湯』
『火龍薬湯』
『チョコレートで伝える愛の湯』
など、パッと聞いてもどんなお湯なのか想像がつかないものが多い。
だが、入ると『ふわよおん』だ。
『へらすわあん』だ。
『はなわすたゆん』だ。
もうなんもかんがえんのやめよう
おれはやめた
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共栄湯は風呂上がりのドライヤーが楽しみな銭湯だ。
勢いのよい(おそらく高い)ドライヤーを浴びれば浴びるほど、髪がふわっふわになっていくのがわかる。最後に冷風でひきしめれば、今まで見たことがないくらいつやっつやになる。
翌日、職場で「あれ、なんか今日髪キレイじゃない?」と言われるかもしれないというわくわく感の始まりだ。まあ、1度も指摘されたことはないが。
とにもかくにも明日への活力が手に入る。
ああ、ほんと、最高だ。
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いかがだっただろうか。
え?「これのどこが女子目線の紹介だ!」ですって?
そもそもね、今は「男子」とか「女子」とか、男らしさとか女らしさとか、そういうのってもう時代が違うっていうか。「女子目線」っていう表現が今やナンセンスっていうか。見つめあう視線のレーザービームっていうか。色とりどりの恋模様っていうか。
ああ、難しいなあ。
私は小難しい話がしたいわけじゃない。ただただ「やっぱり銭湯はいいなぁ」というのが伝わってくれることを願っている。
共栄湯のサウナのことは今回書いていないが、どんなサウナかは行ってのお楽しみ。あとはおのおのでよろしくお願いします。
みんな、共栄湯に行こう!
そして、銭湯に行こう!