札幌(とか)の銭湯を(おふろニスタが)行く

家が火事になりましてね。風呂がないんですよ。で、チャリで札幌の銭湯を巡っていたら、いつの間にかおふろニスタになっていました。中年男性がお風呂が好きだと叫ぶだけのブログです。

4,南区真駒内 真駒内湯

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札幌において、野良犬の数はさほど多くない。個人的に言えば、ここ数年、野良猫はたびたび見かけても、野良犬は1度も見ていない。

それに対して、よく見かけるのが野良狐である。1年に4~6回は遭遇する。

彼らはふいに現れ、不意に消える。だが、公園、川、山、緑のある場所など、そこかしこにひっそりといる。だから、野良犬対策よりも、野良狐及びカラス対策に追われる町内会は多い。ゴミステーション(方言)を野良から日々守るのが町内会の大切な仕事の1つである。

でも、これは札幌の中心部に近い地域での話だ。南区、特に真駒内あたりを超えてからはさらに気をつけなければならない野良がいる。

野良熊である。

私が中学生のころには市内の中学校の校庭に現れ、臨時休校になった例もある。もちろんそんなかわいい話ばかりではない。

熊害で検索すれば、かの有名な三毛別羆事件に並び、札幌丘珠事件を探し出すこともできるだろう。

だから、南区真駒内の住民は言う。「夜のサイクリングロードは怖いよ……熊が」と。

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サイクリングロードは自転車界の高速道路である。私も通勤によく利用している。

札幌では森の中を駆け抜ける白石のこころーど、そして、豊平川の河川敷を走る豊平川サイクリングロード(正式名称はよくわからない)が有名だ。どちらも気持ちの良い自然をお手軽に満喫できる。

私がよく利用するのは豊平川河川敷。今くらいの時期だと、誰かしらがジンギスカンか、BBQか、花火か、を必ずしている。陽気な人たちとほがらかな家族御用達の場所である。

とはいえ、いくらすがすがしい自然の中を爽快に走ったとしても、汗はあとからあとから吹き出てきてしまう。通勤前だろうと、通勤後だろうと。

不快である。

とても不快である。

そうだね、ニルヴァーナだね。

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どこの銭湯でも、暗に問われる質問がある。

あなたは男ですか?それとも女ですか?

いつもなら料金をフロントで支払ってから答えればよかった。しかし、真駒内湯は違う。入口の時点で自分の性別を明らかにしなくてはならない。

私にとって生まれて初めての番台スタイルの銭湯。

それが真駒内湯だった。

番台スタイルの存在はもちろん知っていた。かつて銭湯が舞台のドラマやコントで出てくるのは、おばあちゃんが女風呂と男風呂両方に目を光らせる番台スタイルだった。

しかし、私にとってそれはブラウン管の中の光景だ。が、2018年の札幌にも『時間ですよ』はしっかりとあった。しかも、自分の目の前に!その時点で私の胸は熱くなっていた。

脱衣所から一歩中に入ると、富士山のタイル絵が目に飛び込んでくる。話に聞く、銭湯の富士山のタイル絵。私の心にはあの言葉が流れた。

『Round1!Fight!』

規模は小さい。規模は小さいが間違いなくエドモンド本田ステージだ。時間ですよを越えるとそこはスト2の世界だった。気分は雪国である。

世界にはまだ知らないことがたくさんある。おっさんにもまだまだ初体験がたくさん残っている。

希望。そうか、これを希望と呼ぶのですね!ありがとう、真駒内湯。

心の中で『どすこい』と感謝を込めてつぶやきながら、いつも通り体を流し、すべての浴槽を体験する。

そして、また驚かされる。ウーハーがついているお風呂があったのだ。

「ドンッ!ドンッ!」

1つの浴槽がビートを刻んでいる。それなのに、そのビートが何を意味しているのか入ってみてもよくわからない。周りを見ても、誰もビートを気にしている人がいない。

時間ですよ→エドモンド本田→ウーハー

ちょっとしたタイムスリップ気分だ。今、自分がいる年代を見失いつつ、サウナへと歩を進める。

シャーー

むわッ

ここでも初体験が!

銭湯でありながら、ミスト(スチーム)サウナ!

時間ですよ→本田→ウーハー→ミスト(スチーム)サウナ←new

展開に頭が追いついていかない!体もスチームに慣れていかない!

あれよあれよ、と時間だけが過ぎていく。何回目の水風呂だったろうか。頭に響いたのは

「あっぱっぱっぱー、やったー」

という春麗の喜びの声だった。

エドモンド本田は負けた。スチームにか、ウーハーを理解できない自分の頭の固さにか、それはわからない。だが、おじさんは負けてしまったのだ。

とぼとぼとこうべを垂れながら番台のおかみさんに「ありがとうございました」と声をかけるのが精いっぱいだった。本当は満面の笑みで「時間ですよ」と言いたかったのに……

あまりにも驚きが続くと心と頭がついていかない。それにつられて体の適応も鈍ってしまったのかもしれない。

あまりの自分の初心者っぷりと、老いによる柔軟性のなさが情けない。

そんな私の背中を真駒内湯の富士山は見ていてくれたはずだ。

そう思うと少し慰められた気分になり、明かりのないサイクリングロードをかろうじて走り抜け、無事居候する家に帰ることができた。

スチームサウナと電気風呂への苦手意識。これの克服が今後のカギになりそうである。そう、まだ4/40しかスタンプラリーは進んでいないのだから。

次回、白石区菊水『菊水湯』