札幌(とか)の銭湯を(おふろニスタが)行く

家が火事になりましてね。風呂がないんですよ。で、チャリで札幌の銭湯を巡っていたら、いつの間にかおふろニスタになっていました。中年男性がお風呂が好きだと叫ぶだけのブログです。

17,中央区南4条 喜楽湯

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ある日を境に、私は週に1回必ずすすきのの風呂に行くようになってしまった。

中年男性だし、独身だし、誰にとがめられるわけでもないのだが、なんとなく背徳感のある告白である。心のどこかで後ろめたさでも感じているのだろうか。

しかし、どうにもやめられそうにない。

仕事前の空いた2時間を利用することもあるし、仕事がいつもより遅く終わったあとの2時間ということもある。時間に融通が利くのも魅力の1つだ。

大人になってから、特にいい歳を過ぎてから覚えたら、狂ったようにはまってしまうと聞いたことがある。恥ずかしながら、私は今年になって覚えてしまった。まさにその通りになった。これではまるで猿だ。

だが、今はそれを受け入れ、欲望のまま、体が求めるままに、身をゆだねている。そして、それがあまりに気持ちがいい。ずっとこのままでいいとすら思っている。

そこまで私を狂わせたのは他でもない。

怒りと哀しみが消え失せてしまった場所。

喜楽湯

ここはすすきのに実在するユートピアである。

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すすきのを分断する36号線の端っこから自転車を東に走らせる。すれ違う人々は多種多様だ。

女性的なあまりに女性的な人。赤ら顔のスーツの男性。元気な学生。カップル。

楽しそうな人、悲しそうな人、怒った人もいるだろうし、いい人も悪い人もいるだろう。

それを見るのは、「自転車で1人すすきのを走る中年男性」である。こう表現するともの哀しさがあるかもしれない。しかし、私の心に哀しみなどあるわけがない。もちろん怒りだってない。

私がチャリで36号線を東に走っているとき、それは喜楽湯に行った帰り道だからである。

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場所柄、ほんの少しの警戒心があったことは告白しなければならない。東北以北最大の歓楽街(のはずれだが)にある湯屋。この字面にリラックスできるほど野太い神経など私は持ち合わせていない。

そんな精神状態でいると、ロビーの受付と男湯の間にある閉ざされた扉に特別なものを感じていぶかしんでしまう。

脱衣所では、基本的にはロッカーを使わない(サウナで金属のキーが熱くなってしまうため)のだが、ことさら「ああ、ここは『すすきの』か」とわざわざつぶやいて、不承不承にロッカーを使う。

このように初喜楽湯の心情を書くと、いかに私が偏見に満ちた嫌な奴なのかがおわかりいただけるだろう。

そんな卑小な人間の心も解きほぐしてくれるのが喜楽湯だ。なぜなら、札幌市内唯一無二(だと思う)のとんでもないものが待っているからだ。

それは『地下』サウナとそのそばにある大きな水風呂である。

これらを見つけたとき、満面の笑みを浮かべるのを止められるものなどいない。いや、いるわけがない。

浴場に入ると、すぐ左側には怪しげ(偏見)な階段がある。そこを降りるとサウナがある。かなり熱めに設定されたサウナだ。温度計は90℃を超えている。しかし、その熱さよりも圧倒的な広さに驚かされる。

おそらく今まで記事にした中で1番広かった菊水湯よりもまだ広い。スーパーがつく数々の銭湯よりもスーパーかもしれない。そんな広く熱いサウナの横に、これまただだっ広い水風呂が設置されている。

この水風呂、180cmの私が足を伸ばして浮けるほどだ。そして、notバイブラでキンキンパターン。まったく私好みになっている。その横には汗を流すためのキンキン水シャワー。

ここまでの設備だ。

問題は飛べるか飛べないかではない。どこまで飛べるのか、だ。ここでは己の器量こそ試されている。

さいころの私は千成湯・東豊湯にアドベンチャーを感じていた。大人の私は、喜楽湯にあのころと同じアドベンチャーを感じている。喜楽湯は汚れっちまった哀しみを抱えた大人も無邪気な子どもに戻してくれる。「俺のK点がどこにあるか、やってみようじゃないの!」

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コンクラーベは心に決めている。サウナに咲く湯屋の華との競演である。だが、コンクラーベ後のケアをどうすればいいか。

サウナと水風呂は合法的トビ方ノススメだ。だからこそ、苦行と化しては本末転倒である。楽しめるから続くのだ。無理はよくない。

だが、その点は安心してほしい。喜楽湯には挑戦し、K点を超えた者を癒すには十二分な1階があるのだ。

1階にある熱めの主浴。そこには電気風呂がついている。電気風呂苦手の私がここの電気風呂には度肝を抜かれた。驚くべきことに「腰だけ当てられる」電気風呂なのだ。

幾度か書いては消してを繰り返してみたが、この稀有な電気風呂をうまく描写することができない。だから、ぜひその目で確かめに行ってほしい。どうしてこのような電気風呂の配置を思いつくことができたのか、ただただ感服するばかりである。

すごいのは地下にある闘技場だけではない。地上にある東京ドームだってものすごい。疑うのであれば、猪狩・斗羽戦を読んでみるといい。

話がそれた。

1階はこれだけではない。

主浴の横には1人用ジャグジー(ぬるめ)が3つ並んでいる。ぬるめのジャグジー。これは風呂というよりジャンプ台と言っていいのではないだろうか。トブタメの場所だ。

さらに、ラドン風呂というスーパー宇宙パワー的な個室のお風呂まである。これもぬるめ。

ジャグジーで人の目が気になるなら、こちらでトンでも構わないだろう。ここまで合法的ナトビ方ノススメが整っている場所があるだろうか?

これで終わりではない。

1階には、地下のドライサウナとは別に「スチームサウナ」も設置されているのだ。その横には地下ほどではないが、小さな水風呂もある。

「ドライサウナが苦手な人は、こっちでもトベますぜ。へへへ」

ここまで準備されているなんて、もう極上なまでの合法的ススキノノキワミではないか!!(すすきのも合法です)

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私がどこまでトブことができたのか、それを詳しく書くことはこの項ではあまり意味がないだろう。わかちあうことの美しさと、わかちあうことの喜びは、あなた自身で確かめるべきなのだ。

ただ、自己顕示欲の強い私は銭湯スタンプラリーのしおりに書いた初回の感想を最後に載せたい。

喜楽湯の部分にはこう書いてある。

「ここに来たらすべてが解決する。ここは銭湯ではない楽園だ」

喜怒哀楽のうち、怒りと哀しみが消えた場所、喜楽湯。ここでは「ニルヴァーナ」が感じられるかが問われるのではない。どこまでの「ニルヴァーナ」に到達できるかが問題なのだ。

札幌市内で珍しい12:00~24:00営業の公衆浴場。1回体験すると簡単にはやめられなくなるかもしれない。だが、だまされたと思って利用してほしい。きっと、用法用量を調整しながら、合法的ナトビ方ヲココロエヨ、と誰かが水風呂から話しかけてくるはずである。

次回、中央区南9条 山鼻温泉屯田