札幌(とか)の銭湯を(おふろニスタが)行く

家が火事になりましてね。風呂がないんですよ。で、チャリで札幌の銭湯を巡っていたら、いつの間にかおふろニスタになっていました。中年男性がお風呂が好きだと叫ぶだけのブログです。

24,西区山の手 文の湯

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「健康のためなら死ねる」という矛盾した表現が好きだ。このねじれの中に想像力を働かせる余地が生まれる。

だが、想像力を働かせすぎるために、多くの健康法や健康にいいものに対して「本当に?」とうがった見方をしてしまいがちなのも事実だ。

断食は本当に健康にいいのか?

糖質制限は本当に健康にいいのか?

足のつぼ押してれば健康になれるってどういうこと?

飲尿健康法はどうなったの?

疑問は次から次へと湧き上がっていく。ミギーはそれを解決するために永い眠りにつくことを決断した。私はミギー的なのかもしれないがパラサイトではない。ジョー以上ミギー未満、それが私なのかもしれない。

そんな寄生獣的傾向が文の湯で大いに刺激された。

原因は以下の2つ。

ラドン』と『ブラックシリカ

文の湯と言わず、札幌の銭湯でよく見かけるこいつらはいったい……

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以前、望月湯の項で『ブラックシリカ』を「スーパー宇宙パワーね」などとお茶を濁した表現でスルーさせてもらった。

喜楽湯のラドン風呂については個室になっていることだけを紹介させてもらった。

この2つに対して、スタンプラリー開始当初から、私は語る言葉を持ち合わせていなかったことがわかる。

文の湯のロビーで支払いを済ませた際は、こんな疑問はちらりとも湧いてはいない。なぜなら、文の湯はあまりにも想定の範囲内の銭湯然としているからだ。あくまで第一印象までは、だが。

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ロビーを抜けて脱衣所から浴場内に、見慣れないものが見えるのが気にかかる。文の湯の不思議は目を凝らさなくても目についてしまう。

「内湯に打たせ湯?」

かなりの高所からお湯が落ちている。風呂~楽で露天風呂に設置されているのはあったが、内風呂にあるのは初めてだ。

どうやら一筋縄ではいかないようだ。試される大地北海道の民。自分の力量をはかられる時が来たようだ。

浴槽が2つに水風呂とサウナ、そして件の打たせ湯。浴槽の向こうには富士が見える。

体を流し、浴槽に向かう。問題の『ラドン』と『ブラックシリカ』をアピールする掲示物が見えた。

意図せず、いぶかしい目つきをしてしまう。心の中で「またこれか」とつぶやいてしまいそうだ。

そもそもパワーストーンが科学的に証明されているような文面が怪しい。それに放射能をヒステリックなまでにたたいたあの忌まわしい災害を尻目に、まだ「ラドン」の健康効果が両立できちゃうのが変だよ、と個人的には思うんだよね。まずもってパワーストーンでパワーをもらえること自体、時代に合わな……

……あっちーーーーー

いやいやいやいや覚悟がいる温度じゃないか!ちょっと待って、ちょっと待って。宇宙パワーとか、放射線とかより温度温度!!

「もう、ふいうちは勘弁してよね、こっちで体ならしてから入るわ」

すぐさま副湯へと移るとしよう。そもそも、ブラックシリカパワーストーンだとして、そのパワーが体に流れ込むには時間だって必要だろうし、ラドンの健康効果だって一瞬で生まれるものなわけでもなか……

……あっちーーーーー

こっちも熱いじゃないかッ!!ちょっと待ってってば。富士をバックにあつ湯とあつあつ湯って、思ってもみないってば!

頭に浮かんだ独りよがりな常識など、この2つの浴槽の前ではなんの意味も持ちはしない。サウナにはまだ入っていないが、体を冷やすために水風呂へといそがねばならない。

水風呂はキンキンに冷えていた。その横には、これまた珍しい地下水であることの証明書が掲示されている。

かーーー。サウナに入らなくても、あつ湯と水風呂でくるねー。しかも地下水ってんだから、いろはすみたいなもんでしょ?かー、ぜいたくだねー。

思いもしていない角度からの攻めにいやがおうにも心が沸き立つ。思わす「これが交互浴だ」と叫びたくなる。高まるわ。高まるわ。

押さえきれない興奮を無理矢理押し込んでサウナに行く。すると、あまり得意とはしていないスチーム式だ。

「スチームか……」

そんな思いを抱いた瞬間だった。

シャー

シャー

蒸気が吹き出す。なんじゃこりゃ!あれか、これがロウリュか?うわさに聞く憧れのロウリュ。まさか、ここで経験できるとは予想だにしなかった。

よく見れば、先客の常連さんは顔にタオルを巻いていらっしゃる。この蒸気も込みで楽しんでいるんだ。

はー。銭湯で人工ロウリュってか。もうなんなんだい。さっきから驚かされっぱなしじゃないか。

次のロウリュはいつ?まだ?まだ?

はーキター、ロウリュキター

シューって。シューってあっちーね。いいね、このあっちーのがいいね。

終わっちゃった。

次は?次はいつ?

来る?来る?

あー、だめだ。水風呂だ。待てないのよ。無理はしたくないのよ。えー、でも人工ロウリュー。あこがれのロウリュー。でも、無理しちゃダメ無理しちゃダメ。

カー!!いろはす。水風呂いろはす。ロウリュだし、いろはすだし。

もう、早く!早く次のロウリュいきたい!人工だけどね。本当のロウリュ体験したことないけどね!

でも、水分補給は大事だし、休憩するのがルーティーンだし。打たせ湯もやりたいし。

カー!!

カーーーーー!!

カーーーーーーーーーーー!!!

ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

ニルヴァーナの訪れはいつも突然である。

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結局、文の湯に来たからといって、謎は何1つ解けなかった。

ラドン、ブラックシリカ。そして、その健康効果。

だが、そんなことなどどうでもいいのかもしれない。それより、気持ちよさに身を任せるのに夢中になってしまうことのほうが健全じゃないだろうか。

そう、健康になりたいから銭湯に行っているわけじゃあない。気持ちよくなりたいから銭湯に行くのだ。ただそれだけだ。そもそも気持ちEことより大事なことなどほとんどない。

牛乳飲んでるやつより、音頭をとってるやつより、誰よりも気持ちいい。どこまでも気持ちいい。うー最高!気持ちいいいいいいいいいいいいいいいいい!

これが銭湯に行く原点であり、銭湯に行く理由の頂点だ。

俺が気持ちいい。

それ以上の理由などありはしない。あわよくば、みんなが気持ちよくなっちゃえばいいとも思うから文章にするのだけれど、無理強いされて達成される気持ちよさなどない。だから、せめて気持ちいいことに興味のある人が銭湯に足を運ぶきっかけになる文章を書いていきたいと思っている。

え?もう時間?

時間がたつのはあっという間ですね。

では、今日のお別れの曲です。

RCサクセションで「気持ちE」。

https://www.youtube.com/watch?v=Zjb7PbeUhIU

札幌をキーステーションに、はてなブログからお送りしました。みなさん、次の銭湯でお会いしましょう。銭湯初心者でした。

次回、手稲区手稲本町『藤の湯』