札幌(とか)の銭湯を(おふろニスタが)行く

家が火事になりましてね。風呂がないんですよ。で、チャリで札幌の銭湯を巡っていたら、いつの間にかおふろニスタになっていました。中年男性がお風呂が好きだと叫ぶだけのブログです。

extra9)白石区南郷通7丁目 美春湯内覧会

f:id:tkasaiii:20200920144017j:plain

どりーむぉん

どりーむぉん

どりーむぉん

どりーむぉん

どりーむぉん

どりーむぉん

どりーむぉん

うぉぉぉおんー

朝から頭の中でエアロスミスが歌っている。

札幌に残る数少ない番台式の銭湯・美春湯がロビー式に改装する。その前に、無料で、誰にでも、改装前の番台式の『今』の、美春湯の内覧会を行ってくれる。今日がその初日なのだ。

起きがけにスティーヴンタイラーが高音を響かせても仕方がない。

『今』は明日には昨日になってしまう。明後日にはもう美春湯の『今』を見ることができなくなる。

これは女房を質に入れてでも行かんといかんのだッ!(独身)

ーーーーーー

札幌では、ここ数日連日の狐の嫁入りに見舞われている。市内のあちらこちらで行われる結婚式に振り回され、多くの人が雨に濡れている。

私もその1人だ。

朝からウキウキしていたが、雨宿りしながらふいに不安が襲ってくる。

「ずぶぬれになってまで番台に座りたかったの?」

「そこまでして誰もいないのに女湯を見てみたいの?」

「ほんと、最低ッ!だから、男子って嫌いッ!」

そう思われてしまわないだろうか。

張り切りすぎだろうか。もっとサクッと、シックに行きたかったのだが、それはもう無理かもしれない。

それでもなお。

それでもなお。

それでもなお、番台に座るというのはロマンなのだ。

ーーーーーー

到着すると共栄湯と共同で製作したというオリジナルTシャツを着た美春湯の方たちが出迎えてくれる。

入口は女湯から。

その時点でわくわくが止まらない。

浴場は男湯とは左右対称。棚の配置やおむつ替えスペースがあったり、パーマ用と見間違える例のドライヤーもある。

壁を隔てて、こんな違いがあったことにさらにうきうきしてしまう。

けっして超えてはいけない脱衣所と浴場の小さな扉たちも、今だけは好き勝手に行き来できる。

おもしろい。

おもしろい。

おもしろいッ!

ーーーーーー

さぁ、これからが本番だ。

「番台に座ってもいいですか?」

「ええ、いいですよ!」

おかみさんからの快諾を受け、いよいよ番台へ。

f:id:tkasaiii:20200920152025j:plain

これが銭湯の番台からの景色か。

これが番台からの景色かーッ!!

ーーーーーー

ここから私は申し訳ないくらいに舞い上がり始めた。

お願いして番台に座る写真を撮ってもらったり(冒頭)、動画を撮ったり、バシャバシャ、きゃっきゃっきゃっきゃっはしゃいでしまった。

ひとりで。

だが、こうなると私は止まれない。

そして、思いついてしまった。

「今なら、男湯から女湯を覗いても許されるッ!!」と。

ーーーーーー

「……すいません、男湯から覗いているぼくの写真を撮ってもらえませんか?」

札幌市議会議員を務める美春湯の藤田稔人(@ToshihitoFujita)さんにお願いしてみた。

「ええ、いいですよ!」

なんてさわやかな笑顔だ。

「どうしますか?男湯から覗きますか?」

俺は何をお願いしているのか……一瞬我に返りそうになったが、もう振り返るのはやめだ。今を逃しては男湯から女湯を覗くことは2度とない。

「はい、ちーず」

f:id:tkasaiii:20200920153057j:plain

モザイクの向こうにはこれ以上ないいやらしい顔を浮かべた中年男性が映っているのだが、見せることはできない。

でも、この写真は家宝だ。

ーーーーーー

死ぬほど楽しかった。

こんな体験ができるとは思わなかった。

町の銭湯は、職場と言うよりは『生活の場』だと思っている。そこを公開してくれる心意気がうれしい。

今回の番台式からロビー方式への移行は、美春湯の方々にとっては、長年苦楽を共にした生活の場が変わってしまうということだ。

それは進化であり、成長でもあり、次へのステップだ。

でも、失ったものはもう戻らない。その事実はご家族にどんな思いをもたらしているのだろうか。

前へ進むということは『未来』へ向かうということだ。『未来』へ向かうということは『今』を『過去』にするということだ。

そんな繊細なターニングポイントに立ち会えたことに感謝したい。

そして、「やったー!男湯から女湯覗いたー!家宝だー!」とはしゃいでしまったことを謝罪したい。

美春湯内覧会は『2020.9.21 22:00~23:00』がラストチャンス。生まれ変わったあとの姿を楽しむ前に、生まれ変わる前の姿も楽しんでみてはいかがですか?