札幌(とか)の銭湯を(おふろニスタが)行く

家が火事になりましてね。風呂がないんですよ。で、チャリで札幌の銭湯を巡っていたら、いつの間にかおふろニスタになっていました。中年男性がお風呂が好きだと叫ぶだけのブログです。

せん湯とごはんvol.10)豊平区豊平『鷹の湯』と豊平区豊平『蛸屋本店さっぽろ店』

 

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家が火事でなくなった。

これが銭湯巡り(とブログ)を始めるきっかけになったのだが、「おかげさまで人生が豊かになりました!」と思えるほどポップでキッチュな出来事ではない。

あれからの私はいつも暗い影を背負い、笑顔を忘れ、信じられるものは自分、そして、金だけになった。

と、ハードボイルドを気取りたいところだが、実際はちゃらんぽらんで、ポップに、キッチュに生きている中年男性だ。付け加えるなら、キュート&ソーセクシーでもある。

そのはずだった。

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望外の平日休み。

雪も完全に溶け、自転車は春仕様になった。春の陽気に誘われて、なんだかちょっと遠くまでお出かけしたい気分。

そんなときはさかえ湯がいい。

だが、そこには地獄のような光景が広がっていた。

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外市場の火災。

さかえ湯には入れるのだろうか。

さきほどの写真を撮った時点では、まだそちらを心配していた。自分の想像力のなさに飽き飽きする。

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さかえ湯から目と鼻の先。

写真を撮った後、指が震え始めた。

火が吹きあがる。

呼吸が速くなる。

手足がしびれる。

脂の混じった煙の臭い。悲鳴。サイレン。

頭が真っ白になる。

乗り越えたふりをしていた化けの皮があっさりとはがれる。

これが中年男性のつぶやきだというのだから困ったものだ。

しかし、内面を言葉にすることで自分を客観的に見つめることができた。自分がどんなに混乱しているのかをもう1人の自分が見ている。すると少しずつ落ち着いてくる。

今、俺はここにいるべきではない。

過呼吸をおさめるのに時間がかかったが、それだけは理解できた。

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自転車はいい。

足を回してさえいれば前に進む。前進さえしていれば、いつかはどこかにつく。

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私のどこかとはここだった。

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いつも通りの熱い湯。キンキンの水風呂。替えたばかりのいいにおいのシャンプー。

日常が帰ってくる。

地に足がつく。

サウナがいつもより熱くなっている。最近、鷹の湯で熱湯と水風呂の往復ばかりしていた自分に気づく。

ああ、これで俺は大丈夫だ。

安心したら……

…………

はらが……

へってきた……

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鷹の湯から歩いて3分。

36号線沿い、コロナ禍の中で生まれた新店だ。

風呂上がりのビール。

しかも、つまみはたこ焼き。

さらにせんべろセットは、プレミアムモルツ(を含めたアルコールいずれか)3杯とたこ焼き6個(を含めたおつまみのいずれか1品)がついて

1000円ッ!!

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これで1000円ッ!!

うぎゃあああああ

はふはふはふはふはふ

とろとろとろ

あちあち

はふはふはふはふ

ぐびーーーー

くひーーーー

はほはほあちあち

ぐびーーーー

くはあああああああああ

くはあああああああああ

くはあああああああああ

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複雑な1日だった。

感情の乱高下、過去との対峙、自己との対話。

自分のことばかりで被害にあった方たちには本当に申し訳ないと思う。

それでも私には私なりの痛みがあり、向き合い方があり、なぐさめ方がある。そうやって1日が過ぎ、否が応でも次の1日が来る。

誰もが幸せになれることはたぶんない。

でも、誰もが幸せになってもいい。

それは熱い風呂に溶けていく苦しみだったり、風呂上がりのビールだったり、舌がやけどするほどのたこ焼きだったり。

気がついたとき、「幸せだったのかもな」と感じられたら、それで十分だ。

町の銭湯はきっとその手助けをしてくれる。

だから、私は鷹の湯に行く。

だから、あなたにも地域の銭湯に行ってほしいと思う。

次回:札幌銭湯スタンプラリー再開編 2-1 未定