2-2,西区八軒『琴似温泉』
雨。
自転車との相性がいいとはとても言えない天気。
特に自転車で銭湯に行く際には決しておすすめできない。
それくらい私にだってわかる。バカじゃねえんだから。
ただね。
出ちゃうのよ。
こういうときにこそ出ちゃうのよ。
往復20kmオーバーの目的地が。
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これを作ったのは、日曜日の午前中。
いつもならまだむにゃむにゃしている時間帯だが、やはり新しい取り組みの始まりはうきうきする。おめめぱっちり。あたますっきり。
ちなみにこのルーレットは1度選ばれた場所は選択肢から消え、同じ銭湯が何度も選ばれることがない。
なんて便利。
合理的。
素敵。
最高。
抱いて。
完成した直後、そう思った。
浮かれ気分でロックンロールのまま、最初のルーレットを回して出たのが『琴似温泉』だった。
心の炎は一瞬で鎮火した。
雨の中を自転車で走ると濡れてしまう。それくらい私にだってわかる。何度も言うが、私だってバカじゃない。
さっぱりした体をなぜ雨で濡らさねばならないのか。本当に?マジで?うそでしょ?
雨の場合、このルーレットはどうなりますか?
— おふろニスタ (@ofuronista) 2021年4月4日
誰に課せられたわけでもないルールに、なぜ苦しまなくてはならないのか。まったく理解に苦しむ。
自動的に選ばれた場所が消えるようにした自分が恨めしい。
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どうして私は雨の札幌を西へ西へと自転車を走らせているんだろう
今から風呂に入りに行くのに、もう濡れている
別にルーレットなんかなかったことにして、近場で済ませればいいのにね
こんな完全防備をしてまで自転車に乗ることないのにね
バカなのかね
かもしれないね
それにしてもさむいね
ああ、さむいね
みちがぬれているね
ああ、みちがぬれているね
もうすぐお湯の中だね
お湯の中はいいね
太ったね
君もずゐぶん太ったね
どこがこんなに切ないんだらうね
腹だらうかね
腹とつたら死ぬだらうね
死にたくはないね
さむいね
ああみちがぬれているね
はからずも『秋の夜の会話』が、春の夕暮れに再現された
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ついた。
冷え切った。
なのに、ゴアテックの中のTシャツは汗でびしゃびしゃだ。
でも、ついてしまえばこっちのもんだ。
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琴似温泉は前回以来。実に2年ぶりの訪問だ。このときに『リピートすべき場所』とか書いているくせにとんだ大ウソつき野郎だ。
再訪して改めて思う。琴似温泉の設備の充実さと清潔さは特筆ものだ。ロビーがこんなに美しいカーペット敷きの銭湯ってほかにあったっけな。
浴場も清掃が行き届き、目地は汚れ1つ見当たらない。
では、全身をざっと洗い、主浴へ。
ふわぁ
疲れた体に染みるちょっとだけ熱い温度がうれしい。水風呂もやさしめ。体がマイルドにチューニングされていく。
あ、そういえば電気風呂がやさしいんじゃなかったけ、ここ。
はわぁん
そうそう。
ぬるいお湯にゆるい電気。
そうそうそうそう。だった。だった。思い出した!
よかった。来てよかった。んだば、露天風呂行ってみよう!
『みかん湯』
おおおおおお
薬湯を露天でやってんのかー。これはすげえ。
かんきつううううううう
清涼な香りを全身に浴びながら、ふと壁を見るとタイルで描かれた富士山がある。なんともかわいらしいたたずまい。
いいじゃんいいじゃん。
来るたびに何かしらの発見がある。それが地域の銭湯なんだよねえ。
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サウナ。
暗くて、熱い。だけど場所によって熱量を調節できるから体に合わせやすい。聞こえてくるのは昭和ムード歌謡。
こっちもすごくいいじゃない。
2段目はもちろん熱い。でも、オリンピアの熱を真正面から受ける1段目の真ん中がさらに熱い。すぐびっちゃびっちゃ。汗びっちゃびちゃ。
こんなの最高じゃん。露天に、弱びりびりに、ひえひえ水風呂に、深ジャグジーに、ぴかぴかタイル。しかも、露天風呂の入り口の飲料水がひえひえでうんまいだ、これが。
八軒に住みたい。俺、八軒に住みたい。
あたしゃご近所さんがうらやましいよ。
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すがすがしい気分で琴似温泉をあとにする。
つもりだった。
やっちまっていた。替えのシャツとパンツ忘れっちまった。
何度目の過ちか。何度もやらかしてきたのに、いつまでたっても慣れないミス。でも、仕方がない。
我慢して足を通すとぬめっとする。覚悟を決めて袖を通すとぐちょっとする。
こっから10km、これを着て帰るのかよ。
ちくしょうちくしょう。
そんな悪態を心でつぶやいていていたら、いつの間にか雨は上がっていた。
ま、いっか。
たぶん、スタンプラリーをやらなきゃ、来なかったよな。いい再会だった。パンツがぬれているくらいいいよ。些末なことだよ、これくらい。
……
…………
いや、よくねえな。
あたしゃ、ご近所さんがうらやましいよ。
だから、地域の人は琴似温泉に行こう!
できれば、みんなで地元の銭湯に行こう!
次回:未定