刺青、タトゥーお断り。
これがプール・温泉・スーパー銭湯のデフォルトになったのはいつなのだろう。私が物心ついたときにはこれが『あたりまえ』になっていた気がする。
私は小さいころ家に風呂がなかったゆえ、『湯屋の華』を背負った裸の男性を見慣れていた。
だからなのか、今も「どうしてお断りなのか」を考えると「うーん」と首をひねってしまうような倫理観の持ち主となっている。
2021現在も札幌の銭湯の多くには『湯屋の華』が咲いている。(さかえ湯のようにお断りの銭湯もあるが)
そんな『湯屋の華』にまつわる四方山話。
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基本、私は銭湯ではしゃべらない。
するとすれば、番台(受付)の方とちょっと挨拶する程度。おおむね頭の中だけおしゃべりな、寡黙を気取った独身貴族(バツイチ)として過ごす。
だから、自分から人に話しかけることはほぼないし、そんな陰気な男性に話しかけてくる紳士もほぼいない。
けれど、ときどき思わず話しかけてしまうことがある。そういう日だって、たまにはある。これが私のアナザースカイ。
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蒸し暑い、狭いサウナの中で湯屋の華背負った男性2人が話していた。
A「重機まわすっつっても、オペの手配から何から自分でやらねえでこっちにばっかりふってくるんだよ」
B「見つかんなかったら自分でやんのかい」
A「貧乏暇なしだよ」
B「したっけ、風呂にでも入って息抜きしなきゃやってらんないよなぁ」
「「ガハハハッ、なあー!」」
どんな業界にも気苦労がつきものなんだろうなあ、と聞くとはなしに聞いていた。
A「ここ、休みだったらどこ行ってんの?」
B「あれ、ほら、〇〇通りまっすぐ行ってよ、スーパー曲がったところにある△△ってところよく行く」
あー、俺もよく行く!!
A「わかんねえなぁ」
B「ほれ、●●通り右に曲がってからまーっ直ぐ行ってさ」
A「あーー、近くにJRがある!」
私「いや、それは◇◇ですね」
「「うおっ!?」」
同時に驚く湯屋の華々。私も思わず話しかけた自分に驚く。
A「兄ちゃん、△△よく行くの?」
気を取り直して、気さくに話を振ってくれるおじさん。本当はやさしいおじさん!
私「そうなんです。あそこいいですよね」
B「お兄さん、くわしいのかい?△△のほかはどこ行く?」
私「■■とか行きます。ここから近いですけど、そっちも好きです」
B「あー、あそこなぁ」
A「俺、■■はあんまし行かねえわ。だって、■■って××組の親分来るしょ」
へえ、そんな情報もまわっているんだ。
私「あの人って親分さんだったんですね」
A「そう!ずらーって並んでよー」
B「やくざと一緒に風呂入ってたら落ち着かねえよ」
「「だよなあ!がっはっはっは」」
私「……ッ!?」
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刺青、タトゥーお断り。
なかなか難しい問題だ。
だが、ただただ難しい課題を「難しいね」とそのまま抱え込むことができるのも『公衆浴場=銭湯』の文化の懐の広さ・深さだ。個人的には奥の湯の「3人までOK」というのが発想の勝利だと思う。
だめっていうのもいい。
だめじゃないっていうのもいい。
正直に言うと、日ごろルールを破っていようが、銭湯の中でマナーさえ守ってくれればどうでもいい。
それが私のセブンルール。