白石区は難しい土地だ。
何がどう難しいかを説明するのは無粋というものだが、多くの札幌市民(とりわけ白石区民)は「うむ」と頷いてくれるはずだ。
だからなのか、白石区の銭湯は総じてホスピタリティが高い。利用客のことをよく考えている。
たとえば、白石区の銭湯(美春湯 、大豊湯、共栄湯、鷹の湯、東豊湯 ※鷹の湯・東豊湯は豊平区)が中心となって実施された数々の変わり湯のように。
その中で、共栄湯の方向性はおもしろい。
ピンクリボンの湯、オージュアなどの高級シャンプーが100円で借りられるレンタルシャンプー、日曜日はシャンプートリートメントボディークリームが無料で使えるレディースデイの実施など、数え上げればきりがない。
個人的には、レディースデイに使用するメーカーの変更タイミングが秀逸だった。大人女子を代表する中年男性として実に感服した。
そんな女性に優しい共栄湯の男湯を、今回は女子目線で紹介したい。
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共栄湯を利用する場合、ぜひおすすめしたいのがレンタルシャンプーだ。
私たち女子にはおなじみのDIORUM(ディオーラム)| Aujua(オージュア)をはじめとする高級シャンプーとトリートメントのセットが100円で借りられる。
だが、借りている人はまれだ。男湯はまっこと女子力が低い。
ロッカーのカギのバンドはねじねじ式。濡れても気にならないタイプ。扇風機、ドライヤー、体重計も最新だ。にもかかわらず、オールドスタイルの体重計も鎮座しているところが公衆浴場である。
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浴場に入ったら、主浴横のベストポジションが空いているかどうかを確認する。シャワーが温まるまでに主浴からばっしゃんばっしゃん熱いお湯を汲んで使うことができるからだ。
全身をざっくり洗った後は、まず真ん中の湯船の「熱湯(ねっとう)」へと進もう。
湯温は43℃の表記になっている。が、実に怪しい。
ここ最近の共栄湯の真ん中は『ドタマイカレトンドスカッ!!』と叫びたくなる温度が続いている。その事実を知らないお客さんがちょこっと入って出ていく様はとてもかわいらしい。
なんとか我慢して入り、自分に続く戦士の育成を目指してほしい。自分よりあとに入った紳士が「あちち」と言って足だけ入れて浴槽から出ていく様は見ものだ。それを横目に内心ほくそえんでいると自分の性格の悪さを自覚することができておすすめだ。
そこまで無理をしたくないならば、手前の主浴から始めるといい。ここは安心安全の適温設定。主浴の端は半身浴が楽しめる設計になっていて、こちらもまたいい。
そして、水風呂。
水風呂はけっしてサウナとだけセットというわけではない。共栄湯では、最初のおふろから温冷交代浴を始めてしまってかまわない。
なにせこれは助走だ。
共栄湯の真骨頂は一番奥の『超ぬる薬湯』。
それを思う存分味わいきるには、温冷交代浴を十全に繰り返しておく必要があるのだ。
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共栄湯の水風呂はおそらく地下水かけ流し。なのではないか。と思う。日によって温度が違う。気がする。きっと。
なんとなくだが、寒い日の水は冷たい。とても。すごく。ちめたい。
ぶはあっと水風呂に入ったら、『超ぬる薬湯』の前の蛇口から水を飲むといい。これもおそらく地下水かけ流しだ。たぶん。ちょっと出してから飲むと、水がちんちんに冷えていく。うまい。
そのあと、自席でふわふわしたあと、もう1度、熱湯→水風呂を繰り返す。このとき、水風呂の代わりにサウナ横にある『水シャワー』に置き換えても乙だ。
いいですか?まだですよ?ここで少し休憩をはさんでからです。
さあ行きましょう。
『超ぬる薬湯』です。
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『超ぬる薬湯』はおそらく37℃~38℃くらい。体温とほぼ変わらないので体の負担がほとんどない。何度か繰り返した温冷交代浴によって緩んだ心身は、ついに最高潮へと達する。
しかも、その薬湯は
『マンゴーの湯』
『アサイーの湯』
『パインアメの湯』
『ピンクリボンの湯』
『岩下の新生姜の香り湯』
『火龍薬湯』
『チョコレートで伝える愛の湯』
など、パッと聞いてもどんなお湯なのか想像がつかないものが多い。
だが、入ると『ふわよおん』だ。
『へらすわあん』だ。
『はなわすたゆん』だ。
もうなんもかんがえんのやめよう
おれはやめた
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共栄湯は風呂上がりのドライヤーが楽しみな銭湯だ。
勢いのよい(おそらく高い)ドライヤーを浴びれば浴びるほど、髪がふわっふわになっていくのがわかる。最後に冷風でひきしめれば、今まで見たことがないくらいつやっつやになる。
翌日、職場で「あれ、なんか今日髪キレイじゃない?」と言われるかもしれないというわくわく感の始まりだ。まあ、1度も指摘されたことはないが。
とにもかくにも明日への活力が手に入る。
ああ、ほんと、最高だ。
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いかがだっただろうか。
え?「これのどこが女子目線の紹介だ!」ですって?
そもそもね、今は「男子」とか「女子」とか、男らしさとか女らしさとか、そういうのってもう時代が違うっていうか。「女子目線」っていう表現が今やナンセンスっていうか。見つめあう視線のレーザービームっていうか。色とりどりの恋模様っていうか。
ああ、難しいなあ。
私は小難しい話がしたいわけじゃない。ただただ「やっぱり銭湯はいいなぁ」というのが伝わってくれることを願っている。
共栄湯のサウナのことは今回書いていないが、どんなサウナかは行ってのお楽しみ。あとはおのおのでよろしくお願いします。
みんな、共栄湯に行こう!
そして、銭湯に行こう!