札幌(とか)の銭湯を(おふろニスタが)行く

家が火事になりましてね。風呂がないんですよ。で、チャリで札幌の銭湯を巡っていたら、いつの間にかおふろニスタになっていました。中年男性がお風呂が好きだと叫ぶだけのブログです。

⑧共栄湯

2022年5月10日、共栄湯が休業に入った。目処のない無期限の休みだという。

「原因はボイラーですか?」とご主人に聞くと「それもあるけど、話せば長くなるんだよー」と、笑って答えてくれた。

私「(ボイラーも)寿命なんでしょうかね」

主「え?俺が寿命だって?」

私「いやいやいやいやいやいや」

主「はっはっはっはっは」

ご主人はいつも通りのおちゃめな表情で豪快に笑った。

主「回数券まだある?まだ残ってるなら返金しなきゃ。ちょっと待ってね」

枚数分だけ入浴できるはずだった共栄湯オリジナル回数券。私がご主人から受け取りたいのはお金じゃなかった。

でも仕方がない。話せば長くなる話を承るにはフロントとロビーではあけっぴろげすぎるし、客と店主の間柄では遠すぎる。

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共栄湯はさつよくを抜けてから、独自の回数券を発行するだけでなく、オリジナルグッズ販売にも力を入れていた。Instagramの投稿では銭湯の裏側を元気に映し出してくれていた。

組合に所属していたときには他店を圧倒するくらいのいいドライヤー(ヘアビューザー)を設置したり、絶対に採算の合わないレンタルシャンプーとリンスを100円で提供したりもしていた。

知っているだろうか。Aujua(オージュア)

500mLで7000円するシャンプーと500gで8700円するトリートメントが世界には存在するのだ。その両方をセットで100円で借りられたなんて常軌を逸している。

また、コロナが流行る前には日曜日に朝湯をやっていた。組合所属の銭湯で朝湯をやっていたのは共栄湯だけだった。(今はなき西野の笑福の湯もやっていたが非組だ)

日曜日にはレディースデイとして女湯ではシャンプー・トリートメント・ボディソープが備え付けになっていた。それも「安いものをとりあえず」ではなく、しっかりといいものを提供していた。(かつてDHCのものを使っていたが、差別発言直後、一斉に別の業者のものに変更した強い意志を私は忘れない)

絵本『パンダ銭湯』とのコラボ、パンダ湯を実施した共栄湯。

ピンクリボンの湯を定期的に実施してきた共栄湯。

パインアメの湯・岩下の新生姜の湯・チョコレートの湯などの変わり湯を積極的に実施していた共栄湯。

それらを平然と日常の延長としてやり続けてきた銭湯が共栄湯だ。

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Twitterでも、HPでも、Instagramでも、無期限休業であるお知らせはされていない。もしかしたら、共栄湯が休業したことを知らない札幌市民も多いのではないか。

いや、そもそも共栄湯という銭湯が東札幌にあることを知らない人がいるのではないか。

 

札幌市白石区東札幌にはチャーミングなご主人ときりっとした奥様が協力して、最先端のサービスを提供し続けた銭湯があった。

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目処のたたない休業はある程度の覚悟が必要なのかもしれない。いつ復調するのかわからない我が身にも重なり、胸が苦しくなる。

かつて私が提唱した白石区銭湯四天王 菊水湯・共栄湯・美春湯・大豊湯。そして、白石区温浴施設といえば、南郷の湯に、湯めらんど、富美の湯。

今、この中で(2022年5月13日現在)私たちが訪れることができるのは美春湯・大豊湯と南郷の湯しかない。

「いやあ、回数券換金しないほうがよかったかもね」

共栄湯のご主人とそんな会話ができる日がいつか来ればいい。そう願っている。