札幌(とか)の銭湯を(おふろニスタが)行く

家が火事になりましてね。風呂がないんですよ。で、チャリで札幌の銭湯を巡っていたら、いつの間にかおふろニスタになっていました。中年男性がお風呂が好きだと叫ぶだけのブログです。

26,白石区北郷 大豊湯

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四天王と聞いて、何を思い出すだろうか?

玄武・青龍・白虎・朱雀

三沢・川田・小橋・田上

コロッケ・清水アキラクリカンビジーフォー

前田・鬼塚・薬師寺・葛西

スカルミリョーネカイナッツォバルバリシアルビカンテ

数えあげればキリがない。ゆえに思い入れのある四天王は人それぞれ違うだろう。

だから、悔しい。これほどまでに四天王があるにもかかわらず、私はいまだかつてなんの四天王にも所属したことがない。

この事実に気がつき、私は自分の所属できる四天王探しを始めた。ないならば、探し出せばいい。パンがなければ、ケーキを食べればいい。

たとえば、『札幌の銭湯が地下水を使用しているかどうか気にしている四天王』はどうだろうか。

残念ながら、あと3人を知らない。

『札幌銭湯スタンプラリー四天王』はどうか。

……まだ1周目の途中な上、達成できない現実もちらりと見えてきた。しかも、2019年4月9日現在、2018年度スタンプラリーは90人が達成しているそうだ。http://www.kita-no-sento.com/satsuyoku/中には何十回と達成している方もいる。

いろいろと考えてみたが、自分が一角を担っている四天王はなかなか見つからない。世に四天王は数あれど、そう呼ばれるには相応の資格が必要だということだ。

だが、今まで気にしたこともない新たな四天王はたくさん見つけることができたことは収穫だった。怪我の功名である。

そんな中年男性が発見した四天王を1つ紹介しよう。

菊水 菊水湯

南郷 美春湯

東札幌 共栄湯 

そして、北郷・大豊湯

これが札幌の新・四天王、『白石区銭湯四天王』である。これは誰も知らないはずだ。なぜなら、つい今しがた思いついたものだからだ。

この4つの銭湯のうち、菊水湯、美春湯、共栄湯はすでに紹介済み。残されているのは、白石区銭湯四天王最後の刺客、大豊湯。今回訪れた銭湯である。

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北海道はなんでもかんでもスケールがデカい。

大豊湯の駐車場もおそらくきっちり使えば100台は停められるのではないか、と思うほど広い。暖簾をくぐると、これまたとても広いロビーも待っている。

洗い髪が芯まで冷えて、小さな石鹸がカタカタなるおそれなどまったくない。何もかもが広くてデカい。

ただ、大豊湯で特筆すべきは、その面積の広大さではない。その空間の使い方である。

その稀有な特徴は浴場にあらわれている。浴場も、ご多聞にもれず、もちろん広い。だのに、狭い。いや、狭く感じる。

この感覚はなんだろう。

頭をひねりながら、手に持つ椅子までデカいことにニヤリとしてしまう。

浴場には、あつ湯・ぬる湯・打たせ湯付きの超ぬる湯と電気風呂、サウナに水風呂が設置されている。湯の種類は多い。

サウナだって、8人くらいが入れるくらいの広さがある。あつ湯の湯船も、ぎちぎちになって10人は入れるだろうか。

その他の銭湯に比べても大きい設備たちだ。だが、広い浴場にと比すると、それぞれが少し小さい。

この配分が大豊湯の仕掛けなのだ。

狭い(とはいえ、大きさは一般的な)浴槽の常連客が楽しそうに会話を交わしている。公衆浴場のあるべき姿だ。サウナに行くとこれまた、常連客の方々がお話をしている。これまた公衆浴場的だ。

サウナは少しぬるめだ。だからこそ、客同士が穏やかな表情で会話を重ねることができるのだろう。

体から流れた汗を流し、水風呂へと赴く。常連客さんが多いので、水風呂も相席だ。が、水量が多いので、2人同時でもキンキンのままだ。

そして、休憩のためにカランの前に陣取る。

ここで気がつく。

浴槽の狭さや小ささは会話を促す効果があることに。そして、カランを広くとることで、自分の時間を過ごせるような配慮がされていることに。

隣の人との距離が作れる。体を洗った泡を飛ばすことも飛ばされることも気にせずに済む。かといって、仕切りで区切られる窮屈さは皆無。解放感の中に1人の時間が作ることができる。

そういうことか!!!大豊湯は実に巧妙にデザインされていたのだ。

裸の付き合いを促す公衆性・公共性・コミュニティ・社交場としての機能を演出しつつ、己の時間を開放的に過ごせる場所を同時に成立させる。そのためには広々とした空間と、身を寄せ合うような一般的な大きさの浴槽たちが必要だった!

はぁ、奥が深いわー。

だぁ、計算張り巡らしデザインかよー。

かぁ、にしてもこのぬる湯最高かよー。

のぉ、椅子デカくて座りやすいかよー。

おぉ、キテルキテル

うぅ、ラクエンニキテル

サァ、ラクエンヘヨウコソ

マァ、ウットリ

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これまで行った多くの銭湯はいかに小さな面積に充実した設備を作ることができるのかという課題に向き合っていた。

大豊湯は真逆である。

バブル景気のイケイケを反省し、経済効率・コストパフォーマンスを第一義に置く現代では到達できないコンセプトだ。

この空間の奇妙さ。その奇妙さが作り出すあたたかな人とのつながりと豊かな自分だけの時間。

この味わいをもってして、改めて宣言したい。

白石区銭湯四天王、ここに爆誕ッ!!と。

 次回、中央区南17条 伏見温泉