札幌(とか)の銭湯を(おふろニスタが)行く

家が火事になりましてね。風呂がないんですよ。で、チャリで札幌の銭湯を巡っていたら、いつの間にかおふろニスタになっていました。中年男性がお風呂が好きだと叫ぶだけのブログです。

2-2,西区八軒『琴似温泉』

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雨。

自転車との相性がいいとはとても言えない天気。

特に自転車で銭湯に行く際には決しておすすめできない。

それくらい私にだってわかる。バカじゃねえんだから。

ただね。

出ちゃうのよ。

こういうときにこそ出ちゃうのよ。

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往復20kmオーバーの目的地が。

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これを作ったのは、日曜日の午前中。

いつもならまだむにゃむにゃしている時間帯だが、やはり新しい取り組みの始まりはうきうきする。おめめぱっちり。あたますっきり。

ちなみにこのルーレットは1度選ばれた場所は選択肢から消え、同じ銭湯が何度も選ばれることがない。

なんて便利。

合理的。

素敵。

最高。

抱いて。

完成した直後、そう思った。

浮かれ気分でロックンロールのまま、最初のルーレットを回して出たのが『琴似温泉』だった。

心の炎は一瞬で鎮火した。

雨の中を自転車で走ると濡れてしまう。それくらい私にだってわかる。何度も言うが、私だってバカじゃない。

さっぱりした体をなぜ雨で濡らさねばならないのか。本当に?マジで?うそでしょ?

誰に課せられたわけでもないルールに、なぜ苦しまなくてはならないのか。まったく理解に苦しむ。

自動的に選ばれた場所が消えるようにした自分が恨めしい。

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どうして私は雨の札幌を西へ西へと自転車を走らせているんだろう

今から風呂に入りに行くのに、もう濡れている

別にルーレットなんかなかったことにして、近場で済ませればいいのにね

こんな完全防備をしてまで自転車に乗ることないのにね

バカなのかね

かもしれないね

それにしてもさむいね

ああ、さむいね

みちがぬれているね

ああ、みちがぬれているね

もうすぐお湯の中だね

お湯の中はいいね

太ったね

君もずゐぶん太ったね

どこがこんなに切ないんだらうね

腹だらうかね

腹とつたら死ぬだらうね

死にたくはないね

さむいね

ああみちがぬれているね

はからずも『秋の夜の会話』が、春の夕暮れに再現された

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ついた。

冷え切った。

なのに、ゴアテックの中のTシャツは汗でびしゃびしゃだ。

でも、ついてしまえばこっちのもんだ。

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琴似温泉は前回以来。実に2年ぶりの訪問だ。このときに『リピートすべき場所』とか書いているくせにとんだ大ウソつき野郎だ。

再訪して改めて思う。琴似温泉の設備の充実さと清潔さは特筆ものだ。ロビーがこんなに美しいカーペット敷きの銭湯ってほかにあったっけな。

浴場も清掃が行き届き、目地は汚れ1つ見当たらない。

では、全身をざっと洗い、主浴へ。

ふわぁ

疲れた体に染みるちょっとだけ熱い温度がうれしい。水風呂もやさしめ。体がマイルドにチューニングされていく。

あ、そういえば電気風呂がやさしいんじゃなかったけ、ここ。

はわぁん

そうそう。

ぬるいお湯にゆるい電気。

そうそうそうそう。だった。だった。思い出した!

よかった。来てよかった。んだば、露天風呂行ってみよう!

『みかん湯』

おおおおおお

薬湯を露天でやってんのかー。これはすげえ。

かんきつううううううう

清涼な香りを全身に浴びながら、ふと壁を見るとタイルで描かれた富士山がある。なんともかわいらしいたたずまい。

いいじゃんいいじゃん。

来るたびに何かしらの発見がある。それが地域の銭湯なんだよねえ。

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サウナ。

暗くて、熱い。だけど場所によって熱量を調節できるから体に合わせやすい。聞こえてくるのは昭和ムード歌謡。

こっちもすごくいいじゃない。

2段目はもちろん熱い。でも、オリンピアの熱を真正面から受ける1段目の真ん中がさらに熱い。すぐびっちゃびっちゃ。汗びっちゃびちゃ。

こんなの最高じゃん。露天に、弱びりびりに、ひえひえ水風呂に、深ジャグジーに、ぴかぴかタイル。しかも、露天風呂の入り口の飲料水がひえひえでうんまいだ、これが。

八軒に住みたい。俺、八軒に住みたい。

あたしゃご近所さんがうらやましいよ。

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すがすがしい気分で琴似温泉をあとにする。

つもりだった。

やっちまっていた。替えのシャツとパンツ忘れっちまった。

何度目の過ちか。何度もやらかしてきたのに、いつまでたっても慣れないミス。でも、仕方がない。

我慢して足を通すとぬめっとする。覚悟を決めて袖を通すとぐちょっとする。

こっから10km、これを着て帰るのかよ。

ちくしょうちくしょう。

そんな悪態を心でつぶやいていていたら、いつの間にか雨は上がっていた。

ま、いっか。

たぶん、スタンプラリーをやらなきゃ、来なかったよな。いい再会だった。パンツがぬれているくらいいいよ。些末なことだよ、これくらい。

……

…………

いや、よくねえな。

あたしゃ、ご近所さんがうらやましいよ。

だから、地域の人は琴似温泉に行こう!

できれば、みんなで地元の銭湯に行こう!

次回:未定

2-1,豊平区豊平『鷹の湯』

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このブログの始まりは札幌の銭湯スタンプラリーだった。

札幌市内の銭湯を巡り、私はある2つの真理にたどり着く。

『いい銭湯とは近くにある銭湯』

『〆切のあるスタンプラリーは性格的に合わない』

以上のことから、2年前にラリーを達成して以来、行きたい場所に思いついたまま訪れる今のスタイルに落ち着いた。

そんなふうに自由気ままなおふろライフを楽しんでいたが、気がつくとこの2年で多くの温浴施設が腐海に飲み込まれてしまった。たった2年だというのに、だ。

ブログに書けたさつよく加入の銭湯だけでも

山鼻温泉 屯田湯

菊水湯

風呂~楽

渥美湯

の4件。

さつよく未加入でもブログに記載している分でいえば

湯めらんど

緑の湯

の2件。

ほかにも、スパサフロ、富美の湯、黒田湯、澄川温泉など数え上げればきりがない。

まいった。

愛していることを伝えなければ、愛していると伝わらない。そして、愛していることも愛されていることも知らぬまま永遠の別れがすでに訪れていたと知ることが私の人生にはあまりにも多すぎる。

そう思ったらいても立ってもいられなくなってきた。

コロナ禍・後継者不足・施設の老朽化……

どうにもならないことはどうすることもできない。それはわかっている。それでもなお。それでもなお、応援することをやめたくない。

ただの二スタである私にできることは何もない。だからこそ、ふたたび札幌市内のあちこちで裸になっていこうと思う。

これができることのない人間の数少ないできることかもしれないから。

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@今回のスタンプラリーの個人的ルール@

■達成できなくてもOK

→〆切に追われると嫌になるので、ゆるく。

■チャリで行く

→だって、おなかの周りによくわからないふわふわしたものがついてきたもの。

→まあ、学のない私にはそれが何かはわからないが。

■行く場所はルーレットで決める。

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→せっかく作ったからね

■行ったら1週間以内にアップ

→メモを取るつもりなし

→ブログが書けてから次の銭湯に行く

■黙浴

→コロナ禍だものね。

→まあ、しゃべる相手なんてもともといないから問題ない。

→ん?

→さみしいね?って?

→うるせえ

■以上

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で、2回目の銭湯スタンプラリーの最初に訪れたのは『鷹の湯』だ。

前回のスタンプラリーの始まりもここ、鷹の湯だった。だって、近いんだもん。

それにしても、最近の鷹の湯は若い常連さんが増えてきている。前回のスタンプラリー時は老紳士ばかりの銭湯だったはずなのに。

サウナブームの波がここまで来ているのか。それともわかりにくい鷹の湯の魅力が地域に伝わりつつあるのか。

いずれにせよ、私にとってもっともいい銭湯が鷹の湯だ。いつまでも豊平の地にありつづけてほしい。じゃなきゃ困る。

だが、このところ、鷹の湯ではボイラーの故障が続いている。気がかりだ。なにせ温浴施設の設備修復には巨額の費用がかかるそうだ。1度失われた銭湯がよみがえることはほとんどない。

どうか鷹の湯がこれからも地域にあり続けていることを願うばかりだ。

もしくはどこかの金融機関がピンチの際にはもろ手を挙げて金を貸してくれるくらい業界を盛り上げておけば、万が一を防げるかもしれない。

うむ。

みんな、鷹の湯に行こう!

みんな、地元の銭湯に行こう!

……

え?いきなり近場で済ますなですって?

スタンプラリーのルールはどうしたって?

ルーレット?

ああ、そのことね。

書き忘れてました。

■ルールに縛られるよりも銭湯を楽しむことが優先

→ルール破っても

→まーままーまーまー

→マナーは守るぜ!

→まーままーまーまー

次回:西区八軒『琴似温泉』

せん湯とごはんvol.10)豊平区豊平『鷹の湯』と豊平区豊平『蛸屋本店さっぽろ店』

 

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家が火事でなくなった。

これが銭湯巡り(とブログ)を始めるきっかけになったのだが、「おかげさまで人生が豊かになりました!」と思えるほどポップでキッチュな出来事ではない。

あれからの私はいつも暗い影を背負い、笑顔を忘れ、信じられるものは自分、そして、金だけになった。

と、ハードボイルドを気取りたいところだが、実際はちゃらんぽらんで、ポップに、キッチュに生きている中年男性だ。付け加えるなら、キュート&ソーセクシーでもある。

そのはずだった。

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望外の平日休み。

雪も完全に溶け、自転車は春仕様になった。春の陽気に誘われて、なんだかちょっと遠くまでお出かけしたい気分。

そんなときはさかえ湯がいい。

だが、そこには地獄のような光景が広がっていた。

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外市場の火災。

さかえ湯には入れるのだろうか。

さきほどの写真を撮った時点では、まだそちらを心配していた。自分の想像力のなさに飽き飽きする。

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さかえ湯から目と鼻の先。

写真を撮った後、指が震え始めた。

火が吹きあがる。

呼吸が速くなる。

手足がしびれる。

脂の混じった煙の臭い。悲鳴。サイレン。

頭が真っ白になる。

乗り越えたふりをしていた化けの皮があっさりとはがれる。

これが中年男性のつぶやきだというのだから困ったものだ。

しかし、内面を言葉にすることで自分を客観的に見つめることができた。自分がどんなに混乱しているのかをもう1人の自分が見ている。すると少しずつ落ち着いてくる。

今、俺はここにいるべきではない。

過呼吸をおさめるのに時間がかかったが、それだけは理解できた。

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自転車はいい。

足を回してさえいれば前に進む。前進さえしていれば、いつかはどこかにつく。

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私のどこかとはここだった。

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いつも通りの熱い湯。キンキンの水風呂。替えたばかりのいいにおいのシャンプー。

日常が帰ってくる。

地に足がつく。

サウナがいつもより熱くなっている。最近、鷹の湯で熱湯と水風呂の往復ばかりしていた自分に気づく。

ああ、これで俺は大丈夫だ。

安心したら……

…………

はらが……

へってきた……

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鷹の湯から歩いて3分。

36号線沿い、コロナ禍の中で生まれた新店だ。

風呂上がりのビール。

しかも、つまみはたこ焼き。

さらにせんべろセットは、プレミアムモルツ(を含めたアルコールいずれか)3杯とたこ焼き6個(を含めたおつまみのいずれか1品)がついて

1000円ッ!!

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これで1000円ッ!!

うぎゃあああああ

はふはふはふはふはふ

とろとろとろ

あちあち

はふはふはふはふ

ぐびーーーー

くひーーーー

はほはほあちあち

ぐびーーーー

くはあああああああああ

くはあああああああああ

くはあああああああああ

ーーーーーー

複雑な1日だった。

感情の乱高下、過去との対峙、自己との対話。

自分のことばかりで被害にあった方たちには本当に申し訳ないと思う。

それでも私には私なりの痛みがあり、向き合い方があり、なぐさめ方がある。そうやって1日が過ぎ、否が応でも次の1日が来る。

誰もが幸せになれることはたぶんない。

でも、誰もが幸せになってもいい。

それは熱い風呂に溶けていく苦しみだったり、風呂上がりのビールだったり、舌がやけどするほどのたこ焼きだったり。

気がついたとき、「幸せだったのかもな」と感じられたら、それで十分だ。

町の銭湯はきっとその手助けをしてくれる。

だから、私は鷹の湯に行く。

だから、あなたにも地域の銭湯に行ってほしいと思う。

次回:札幌銭湯スタンプラリー再開編 2-1 未定

銭湯四方山話 その壱)湯屋に咲く華

刺青、タトゥーお断り。

これがプール・温泉・スーパー銭湯のデフォルトになったのはいつなのだろう。私が物心ついたときにはこれが『あたりまえ』になっていた気がする。

私は小さいころ家に風呂がなかったゆえ、『湯屋の華』を背負った裸の男性を見慣れていた。

だからなのか、今も「どうしてお断りなのか」を考えると「うーん」と首をひねってしまうような倫理観の持ち主となっている。

2021現在も札幌の銭湯の多くには『湯屋の華』が咲いている。(さかえ湯のようにお断りの銭湯もあるが)

そんな『湯屋の華』にまつわる四方山話。

ーーーーーー

基本、私は銭湯ではしゃべらない。

するとすれば、番台(受付)の方とちょっと挨拶する程度。おおむね頭の中だけおしゃべりな、寡黙を気取った独身貴族(バツイチ)として過ごす。

だから、自分から人に話しかけることはほぼないし、そんな陰気な男性に話しかけてくる紳士もほぼいない。

けれど、ときどき思わず話しかけてしまうことがある。そういう日だって、たまにはある。これが私のアナザースカイ。

@@@@@@

蒸し暑い、狭いサウナの中で湯屋の華背負った男性2人が話していた。

A「重機まわすっつっても、オペの手配から何から自分でやらねえでこっちにばっかりふってくるんだよ」

B「見つかんなかったら自分でやんのかい」

A「貧乏暇なしだよ」

B「したっけ、風呂にでも入って息抜きしなきゃやってらんないよなぁ」

「「ガハハハッ、なあー!」」

どんな業界にも気苦労がつきものなんだろうなあ、と聞くとはなしに聞いていた。

A「ここ、休みだったらどこ行ってんの?」

B「あれ、ほら、〇〇通りまっすぐ行ってよ、スーパー曲がったところにある△△ってところよく行く」

あー、俺もよく行く!!

A「わかんねえなぁ」

B「ほれ、●●通り右に曲がってからまーっ直ぐ行ってさ」

A「あーー、近くにJRがある!」

私「いや、それは◇◇ですね」

「「うおっ!?」」

同時に驚く湯屋の華々。私も思わず話しかけた自分に驚く。

A「兄ちゃん、△△よく行くの?」

気を取り直して、気さくに話を振ってくれるおじさん。本当はやさしいおじさん!

私「そうなんです。あそこいいですよね」

B「お兄さん、くわしいのかい?△△のほかはどこ行く?」

私「■■とか行きます。ここから近いですけど、そっちも好きです」

B「あー、あそこなぁ」

A「俺、■■はあんまし行かねえわ。だって、■■って××組の親分来るしょ」

へえ、そんな情報もまわっているんだ。

私「あの人って親分さんだったんですね」

A「そう!ずらーって並んでよー」

B「やくざと一緒に風呂入ってたら落ち着かねえよ」

「「だよなあ!がっはっはっは」」

私「……ッ!?」

@@@@@@

刺青、タトゥーお断り。

なかなか難しい問題だ。

だが、ただただ難しい課題を「難しいね」とそのまま抱え込むことができるのも『公衆浴場=銭湯』の文化の懐の広さ・深さだ。個人的には奥の湯の「3人までOK」というのが発想の勝利だと思う。

だめっていうのもいい。

だめじゃないっていうのもいい。

正直に言うと、日ごろルールを破っていようが、銭湯の中でマナーさえ守ってくれればどうでもいい。

それが私のセブンルール。